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【あおもりニュース】写真家の柿崎真子さん(青森市出身)が、祖父の古写真と“二人展”@青森市

青森の戦前を写した祖父の古写真と、
孫が写す“匿名の青森”の風景写真を同時に展示
〜国際芸術センター青森「ヴィジョン・オブ・アオモリvol.16」

青森市出身の写真家・柿崎真子さん(東京都在住)の作品と、祖父が残した青森の古写真とコラボレーションする“二人展”が6月17日(日)まで、青森市の国際芸術センター青森(ACAC)で開催されています。戦前戦後の青森の風物や人を写した古写真と、柿崎さんが近年撮影した青森県内の風景が、折り重なり、青森の今昔を複層的に写し出す展示となっています。

ACACが企画する展示会、「ヴィジョン・オブ・アオモリvol.16 Part1」では、柿崎真子さんの「アオノニマス 潜」を展示、Part2「ある、晴れた日に」では柿崎さんの祖父・柿崎貞蔵さんの古写真をデジタルスキャンした111カットがスライド上映されています。

柿崎真子さんが写真家を志したのは大学時代のこと。3年生の頃、亡き祖父・貞蔵さん(ていぞう、明治41年〜平成3年)が残した大量の古いネガが見つかったことから、写真部の暗室にこもってひたすら写真をプリントしてみると、古い青森市の繁華街やスキー場、海辺、そしてファインダーを見つめる人たちの姿が浮かび上がりました。

明治時代には青森市柳町通りに店を構え、昭和30年頃は農薬、ペンキ、工業製品、線香、蝋燭、ねぶたの染料などを販売していた「柿貞商店」。貞蔵さんとカメラや写真について話した記憶がなかった真子さんにとって、貞蔵さんが残した1000枚に上るスナップ写真が与えてくれた影響は大きいと言います。

「今よりも格段に扱いの難しい昔のカメラを手に、たくさんの人の穏やかで優しい表情を撮影した祖父は、どういう気持ちで写真を撮っていたのだろうと、想像してしまいます。写真を撮り続けるほどに、“このような写真が今の自分に撮れるだろうか”と自問するようになり、いつの間にか、祖父は見えない師のような存在になっています」と、柿崎さん。

表情豊かで、人々の生き生きとした様子を切り取った祖父の視点に立って111カットをセレクトし、「ある、晴れた日に」というタイトルを付けたと言います。

一方、真子さんの「アオノニマス 潜」では、青森の風景でありながらアノニマス(匿名)な印象を与えるシリーズ《アオノニマス》の最新作17点を展示。上京して15年以上にわたり、年に数回帰省しては県内の景色を撮り続けています。

当初は、身近な景色を、青森と気付かれにくいような意図的な構図で撮影していたものの、その後、観光名所などにもレンズを向けるようになったとのこと。被写体に岩や地層、森、水のある風景などが多いのは、時間をかけて堆積、集積した空間に関心があるから。一つの転機となったのは、恐山を撮影した時のこと。「そこに立ち、呼吸をし、時間を過ごした時、“土地の声”のようなものを感じました。その時から、目の前の景色に、その地に根付く命は何かと尋ねるような思いでシャッターを切っています」

「アオノニマス 潜」については、「たとえば海を見た時に美しいと捉えるか、怖いと思うか。人の意識の向き方は、潜在意識や経験値が関わっているのかもしれません。自分の意識に隠れている感じ方を探りながら見ていただければ」と話します。

なお、今回の企画展は、「あおもりっていいなぁ」で柿崎さんの活動と貞蔵さんの古写真をご紹介したことなどに端を発した報道等がACACの方の目に付き、実現したとのこと。「祖父の古写真とのいわば“二人展”は、いつか実現した夢でした。こんなに早く実現して嬉しい」と、喜びます。

最終日の6月17日には、青森の古写真に詳しい相馬信吉さんと柿崎さんによるトークが行われます。

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ヴィジョン・オブ・アオモリ vol.16

2018年4月28日(土)ー6月17日(日)
10:00ー18:00 会期中無休 無料
国際芸術センター青森(青森市合子沢)

《PART1》
柿崎真子 「アオノニマス 潜」
@国際芸術センター青森 ギャラリーB

《PART2》
「ある、晴れた日に」
@国際芸術センター青森 AVルーム

6月17日(日)14:30ー16:00
柿崎真子×相馬信吉トーク
@国際芸術センター青森 ラウンジ

(編集部・小畑)

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