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【あおもりびと発見@青森】ジャンプ競技の灯 絶やさない/金木ジャンプクラブ・古川純一さん

金木ジャンプクラブヘッドコーチ、ノルディック複合元五輪選手:
古川純一さん(五所川原市金木町出身、在住)

 

スキー王国として高い競技力を誇っていた青森県。しかし競技人口は減少、特に県内ジャンプ選手は一時1人まで減り、成績も低空飛行が続いた。そんな中でも小中学生の選手を育成し続けてきたのが五所川原市金木町の「金木ジャンプクラブ」だ。

指導するのはノルディック複合でリレハンメル五輪個人19位、長野五輪個人23位の経歴を持つ、地元出身の古川純一さんだ。五所川原市職員の傍ら同クラブのヘッドコーチを務め、スタッフら20人余が脇を固める。2018年度には巣立った選手が全国中学校スキー大会で2位に入り、2021年シーズンには11人の選手が登録している。代表選手の活躍を受け、選手数も徐々に回復。競技力を取り戻しつつある。

 

母校の選手ゼロに衝撃

だが、古川さんが県外からUターンしてきた1999年には、本県のジャンプの灯は消えかけていた。母校の旧金木南中(金木中に統合)はかつて「南中飛行隊」と呼ばれた名門だが、選手の姿はゼロ。「底辺拡大どころか、一から再建する必要があった」と振り返る。

 

2001年に嘉瀬スキー場にスモールヒル(K点20m)が整備され、古川さんはジュニアジャンプ教室を始めたが「高学年になってから始める子たちは野球などと二足のわらじ。中学で続ける選手が少なく、競技人口回復につながらない」。もどかしさが続いた。

 

地道な成果が実り始めるのはその数年後。コーチとして指導に当たった母校の後輩たちが競技に戻り、ボランティアで指導に加わる。そしてその子どもたちが加入する流れができ始めた。

 

後輩たちが志に共感

現在、クラブを支える沢田匡希さんもその一人だ。地元出身で法政大学へ進学、国体出場時にコーチの古川さんに出会った。帰青して一度は競技を引退したが、県内のジャンプ選手がたった1人になったと知り、「少しでも競技者が増えれば」と2年のブランクを経て復帰した経験を持つ。

「古川さんは中学高校も同じ、身近で偉大な先輩。この人の力になりたいと思ったし、『地元から世界に通用する選手を再び育てたい』という志に共感して、同じ思いを持つ仲間もこんなに増えた」と、積極的にジャンプ台の整備作業に汗をかく。

 

沢田さんの娘の珠慧莉(じゅえり)さんも、そうした父の師弟関係を見て、自らの意思でクラブに入った。今季5年目、古川さんも太鼓判を押す有望株に成長。「五輪選手から習える環境はほかにない。高梨沙羅選手みたいになりたいと思った。古川コーチは今のうちから、より大きなジャンプ台で飛べるように技術的なことを丁寧に教えてくれる」と競技を心底楽しんでいる。

 

スキー場に戻った笑い声

現在、県内で稼働しているジャンプ台はこの嘉瀬スキー場のみ。中学生になるとジャンプ台での実戦的な練習環境が県外中心になるなど、課題も多い。だが「仲間と一緒に選手の成長を喜び、スキー場に笑い声が戻ったことが嬉しい」と古川さんは手応えを感じている。

「まずはジャンプを楽しんで、中学でも続ける子たちを増やしたい。ここから国内、世界に通じる選手が巣立ってくれれば理想的ですよね」。自身に続く、20mのK点のその先、世界に飛び立つ選手の誕生を夢見ている。

 

(あおもり地域編集会議事務局/元編集部S)

 


問合せ:五所川原市金木総合支所 古川純一次長(代表電話0173-35-2111)

練習場所:嘉瀬スキー場(五所川原市金木町嘉瀬上端山崎115-3)
 

*「あおもり地域編集会議」参加者投稿
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