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【あおもりびと発見!@東京】人気の楽曲を南部弁で次々カバー、解説動画も公開

クリエイティブユニット「ジンジャー姉妹」:
湊山りえ&はる(八戸市出身、東京都在住)

 

「雪だるま こへるべ〜♫」と南部弁で歌ったディズニーアニメ「アナと雪の女王」(以下アナ雪)の挿入歌「雪だるま作ろう」と「生まれてはじめて(リプライズ)」のYouTube動画が、再生回数累計1200万回以上!!そんなトンデモナイ記録を打ち立て、現在はさまざまな楽曲の南部弁バージョンを発表しているクリエイティブユニット「ジンジャー姉妹」のお二人に、故郷の言葉である「南部弁」へのこだわりや魅力などについて伺いました。

「ジンジャー姉妹」の姉・湊山りえ(左)と、妹・はる

 

「アナ雪」南部弁カバーは累計1200万回以上の再生数

ーお二人は実の姉妹だということですが、当初は妹のはるさんが一人で南部弁カバーを始めたそうですね。圧倒的な歌唱力に聞き入ってしまいますが、どうして南部弁で歌おうと思ったのですか。

 
はる:5年ほど前、「アナ雪」を博多弁で歌っている人がいて、「南部弁でもできそうだな」という軽い気持ちでした。機材など持っていなかったのでカラオケに行ってiPhoneで「生まれてはじめて」を録音したら、意外と綺麗に録れまして(笑)。YouTubeにアップしたら反応が良かったので、次に「雪だるま作ろう」の南部弁バージョンも公開したんです。でも、1200万回という再生回数には自分でも驚きました。

りえ:小さい頃からはるは歌が上手くて、父がスナックに連れて行った時に歌ったら、「このめらしっこ(娘さん)、やだら歌うめぇな」って、他のお客さんからお小遣いをもらったこともありました(笑)。私は東京に出てきた時、南部弁をからかわれたこともあったので少しコンプレックスがあったんですね。でも、はるの歌を聞いた時、南部弁って実は素敵な言葉だったんだなって感じたんです。その後、しばらくはるの動きがなかったので、「もうYouTubeはやらないの?」と声を掛け、南部弁について話すうちに、南部弁の解説もしたいねということになり、二人で顔出しで活動することになりました。

 

歌詞や動画に、八戸のランドマークや名物を

ーはるさんは当初、「ジョーノハルコ」として活動していましたね。2019年10月からのユニット名は、なぜ「ジンジャー」なのですか。

 
りえ:実は、実家が神社でして(笑)。私が以前勤めていた会社で、社員同士がニックネームで呼びあう文化があり、実家のことを話したら親しみを込めて「ジンジャーさん」と呼んでくださいました。そこで今回、ユニット名にも使おうと思ったわけです。姉妹だから、実家は一緒ですもんね(笑)。

 

ージンジャー姉妹としては、これまでに10曲、解説動画を5本、YouTubeにアップしていますね。製作に苦労した曲はありますか。

 
はる:ユニットで最初に作った映画「天気の子」の主題歌「グランドエスケープ」のカバーは、録音機材やコンデンサーマイクの使い方などが分からない中で自宅録音したのでとても時間がかかりました。本業は私がデザイナー、姉もデザイン全般に関わる仕事なので、動画も自分たちで作っています。DREAMS COME TRUEの「大阪LOVER」をカバーした「八戸LOVER」は、みろく横丁や館鼻岸壁朝市、いちご煮やせんべい汁など八戸のランドマークや名物・名産などをたくさん入れ込んだし、動画と音楽のタイミングを合わせる作業も、とっても大変でした。でも、アナ雪の曲を作った時も、「がんばれ光星」「八食行くべ」など、地元の固有名詞や絵を出したらみんな喜んでくれたので、何とか頑張って完成させました。

 

「いさばのかっちゃ」の訛りを思い出しながら

ー南部弁への翻訳は、どのようにしています。

 
はる:自分の記憶を頼りに訳しています。実家は湊高台にある四本松神社で、浜で仕事をする「いさばのかっちゃ」と呼ばれるお母さんたちがよく来ていました。そのかっちゃたちの強い訛りが飛び交う中で暮らしていたし、明治生まれの祖母も同居していたので、南部弁のリズムや響きはしみ込んでいます。

りえ:私も、高校に入った時、同じ市内に住む同級生にからかわれるくらい訛りが強かったんです(笑)。上京後は標準語を基本に暮らしていて南部弁はすっかり遠いものになっていましたが、はるの歌を聞いて古い記憶が鮮明に甦る感じがありました。YouTubeのコメントも「笑える」「おもしろい」という他に、「沁みた」「泣ける」「懐かしくて胸がいっぱいになった」といった言葉もあり、自分と同じように思う人達がいることが、とても嬉しく感じています。

 

ー3月末には、地元のたくさんの方が参加された「パプリカ」を公開しました。

 
はる:八戸の人や景色をたくさん紹介したいという気持ちと、新型コロナウイルスによる自粛生活で家の中にいる子どもたちが家の中で楽しめるコンテンツを作りたくて、踊りで出演してくれる人をfacebookで募集しました。高校時代の友達やそのお友達とか、どんどん参加してくれて、ヴァンラーレ八戸FCや八食センターの方々も快く協力していただき、ありがたかったです。星野源さんの「うちで踊ろう」も、私たちらしい「うちで訛ろう」バージョンを作りました♫まだしばらく自粛の日が続くので、この動画と一緒に身体を動かして、みなさん元気に過ごしてほしいです。

 

パプリカ / Foorin【青森・南部弁バージョン】
https://www.youtube.com/watch?v=QNU0thJYZTc

 

消えて欲しくない南部弁を伝え、残す

ー解説動画をアップしている狙いは、何ですか。

 
はる:地元の若い世代は、昔ながらの南部弁を使うことが少なくなっています。消えてほしくない南部弁を歌や動画といった形に残して伝えていきたい思いがあります。解説する時は、『南部の言葉』『津軽の言葉』といった南部弁や津軽弁の古い辞書や資料、時には論文を調べてお話することもあります。

りえ:私たちの強みは、八戸で育って、いま八戸を離れていること。八戸にずっと住み続けていたら、言葉や地域の魅力は気付かないままだったかもしれません。距離を置いたからこそ魅力が見え、「あれ、思ったより価値の高いものがあるんじゃないかな」と思えるようになった。歌を通して発信してみたら、地元の人からもポジティブな反応がすごく多くて、嬉しかったですね。私たちのコンテンツを起点として、知らないところで八戸の話題が盛り上がったり、違うコミュニケーションが生まれていることをtwitterで見かけたり。そんな動きが生まれるのも面白いです。

ー今後の活動予定をおしえてください。

 
はる:五所川原市出身の作曲家・高谷健吾さんとtwitterで知りあってから、「えんとつ街のプぺル」の曲をリアレンジしていただくなど、より幅広い表現にチャレンジすることができるようになりました。最近は、青森在住のユーチューバー、DAIBUTSUさんの津軽弁とのデュエットで「塔の上のラプンツェル」の劇中歌「輝く未来」も作りました。これからも、いろいろな曲、様々なスタイルで南部弁の魅力を伝えていきたいです。

りえ:今後は、八戸や青森を盛り上げるコラボレーションの取り組みや、トークライブなど新しい活動も模索したいです。地域に根ざした言葉が強く人の感情を動かすことを実感しているので、グラフィックやデザインといった私たちの専門領域も絡めて、より分かりやすい形で世に発信していきたい。そして、歌で南部弁に興味を持ってもらい、さらに深く南部弁を知りたい人にもアプローチできるような流れを作れたらいいなと思っています。

私たちは大人になってからのほとんどの年月を、東京で過ごしてきました。私たちを育んでくれた地元八戸に対して何も貢献できていない、というもどかしさのような感情も正直あります。八戸と東京、2つの地域で過ごしてきたこと。そして姉妹2人とも、デザイン・クリエイティブ職に長年携わってきたこと。そのような背景を逆に強みとして、これから微力ながらも、南部弁や地元八戸の魅力を県外に伝えていくお手伝いができたら、とても嬉しく思います。

(編集部・小畑)

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《ジンジャー姉妹》  
問い合わせ先 ginger.shimai@gmail.com

YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/c/gingershimai
twitter https://twitter.com/gingershimai
facebook https://www.facebook.com/ginger.shimai/

 

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