【タイムトラベルあおもり】017.あら不思議!白黒写真が「カラー写真」に変身
私の手元には、多くの方々からご提供いただいた、青森県関係の古写真のデジタルデータが5万枚ほどあります。
その殆どは、カラーフィルムがない時代の白黒写真です。
それらをじっと眺めていると、白黒写真として定着されたこの光景は、当時は実際どのような色をしていたんだろう、と思うことがあります。
それは写真の撮影者がカメラのファインダーを通して、その時に間違いなく見ていた色なのに、白黒フィルムに写し込まれる過程で、白と黒以外の色情報はすべて抹消されてしまっていたのです。
失われた写真の色情報を「再現」できたなら、古写真が現代の人々に与える感動はより大きなものとなり、過去の歴史への関心も写真を通して、大きくなるに違いないと考えてきました。
そんな夢想をしている中、早稲田大学の石川博教授らの研究グループが、人工知能を使った白黒写真の自動色付けの技術を今春に公開しました。
これまでの白黒写真への色付方法は、人手が必須で、かなりの手間暇がかかっていました。
しかし、今回はそれが自動で、しかもたった10秒足らずでカラー化が完了してしまいます。
早速、Webサービスへ行って利用させてもらいました。
少しの待ち時間で白黒写真に色が付いてきます。
人間の顔や木々などは、うまく着色されますが、うまくいかないものもたくさんあります。
また、着色された色が当時の色そのものだという確証はありません。
あくまでも、「疑似着色」の範囲内で、白黒写真とは違う雰囲気を楽しみ、古写真を身近に感じて欲しいと思います。
首都大学東京の渡邉英徳准教授は、白黒写真の自動カラー化を「過去の解凍」と表現しています。
白黒情報として圧縮されフイルムに納められてきたものが、最新技術によって「近似カラー写真」として蘇ります。
過去にそこにあったはずの色情報が、溶け出して着色されています。皆さんも一度お試しください。
以下に、自動カラー化が比較的うまくいった写真を6枚、皆さんにご紹介したいと思います。
写真1は詩人の寺山修司が青森高校3年生のときに、学校近くの荒川べりでボートに乗っている写真を自動カラー化したものです。
顔が肌色に見えることで、まるで「寺山少年」がそこにいるように見えてきます。
更に、撮影日も60年以上前にも拘らず、つい最近の写真のように思えてくるから不思議です。
写真2は、戦場でヘリコプターに乗っている報道カメラマンだった沢田教一です。寺山修司とは、青森高校の同期でした。
戦場写真は白黒が多いのですが、色がつくことによって、沢田の表情がぐっと穏やかに感じられてきます。
写真3は、昭和33(1958)年に野辺地町で撮影された子供達が紙芝居を見ている場面です。
カラー化することによって、子供達の表情がより、豊かに見えてきます。
写真全体の臨場感も増してきます。「色の力」は、絶大です。
写真4は、昭和28(1953)年の青森ねぶたと子供達の写真です。
カラー化を行う人工知能は、青森ねぶた写真まで情報として与えられていないのか、ねぶたの原色を全く再現できていません。
しかし、ねぶたの前にいる子供達の顔は絶妙な着色が施され、生き生きと復元されています。
鼻白もカラー化されることによって、その民俗学的意義に迫れるように思われてきます。
写真5は、昭和30(1955)年に青森県六ケ所村で撮影された三兄妹の様子です。
かつてはこのように年長の兄姉が幼い弟妹をオンブして面倒を見るのは、普通でした。
着色されることで、温かみのある写真に変化しています。
写真6は、昭和10(1935)年の青森市柳町を写し取ったものです。
左奥に松木屋が見えています。
手前にある箱は、馬糞を入れる箱です。
人工知能は写真の季節までは、判読できないようです。
しかし、80年以上前の古写真に多少なりとも色がつくと、身近な写真に感じられてくるから不思議です。
人工知能を使った白黒写真の自動カラー化は、古写真に全く関心のなかった人々へ目を向けさせるきっかけになろうとしています。
今後、更なる技術改良が施され、色再現度の高い写真を私たちに提供してくれるよう期待しています。
(青森まちかど歴史の庵「奏海」の会:青森太郎)