私の好きなあおもり

【10/14 あおもりっていいなぁ交流会_レポート】津軽こぎん刺しの歴史、伝えた人の思いに触れて

 

ちょっと時間が経ちましたが、10月14日(土)に、アーツ千代田3331で開催したあおもりっていいなぁ交流会 in 東京「こぎんと生きる〜『津軽こぎん刺し』の可能性〜」についてレポートします。

告知からわずか1週間ほどで80人の定員がいっぱいになり、首都圏のこぎん人気を実感した今回のトークイベント。当日の会場には、こぎん刺しのバッグや小物を持ったり、身に着けた方がたくさんいらっしゃいました。挙手していただいたところ、青森県出身の方が約3割、こぎん刺しの経験がある方は8割ほどもいらっしゃいました!会場が、“静かな熱気”に包まれるわけです^^;

 

“幻のこぎん映画”に集中

主催の青森県企画政策部地域活力振興課の五戸彰彦氏の挨拶に続き、ドキュメンタリー映像「津軽こぎんー高橋寛子ー」(1978年、伊勢真一監督、25分)を上映しました。

弘前市桔梗野に住み、明治時代に一度途絶えたこぎん刺しの復興に力を尽くした高橋一智氏、妻の寛子氏に迫ったドキュメンタリーです。陶芸家にして、膨大なこぎん刺しの模様を収集・記録した一智さんと、長年にわたりこぎんを刺し続けた妻・寛子さんの暮らしと、ひたすらこぎん刺しを追求し、次世代に引き継ごうとする様子を、昭和52〜53年に撮影した記録です。

テレビ番組用に撮影され、放送後に上映される機会はほとんどなかったため、いわば“幻のこぎん映画”。会場の皆さんは、雪深い津軽の景色、スッ、スッと布を滑るように針が動く寛子さんの手元や、津軽の名もない女性たちが生み、作ってきた数々の模様について語る一智さんの言葉に集中していました。

 

ゲスト3人によるトークショー

トークショーには、kogin.net主宰でグラフィックデザイナーの山端家昌さん(青森県おいらせ町出身、東京都在住)、こぎん刺し作家の角舘徳子さん(岩手県大船渡市出身、東京都在住)、津軽発のこぎん雑誌「そらとぶこぎん」編集長の鈴木真枝さん(弘前市出身、青森市在住)のお三方をゲストにお迎えしました。

 

「仕事着」で始まったこぎんの歴史を紹介

まず、こぎんについて長く調べている山端さんが、江戸時代に始まるこぎん刺しの歴史や、炭かごを背負って運んだ時の重さで擦り切れる肩の部分に糸で刺して補強した「仕事着としてのこぎん」などについてご説明くださいました。
続いて、それぞれのこぎん刺しに対する思い、作家としての暮らしぶりなどをお話しいただきました。

 

山端さん:他分野からも関心持たれるよう「デザイン」

・高校生の頃、弘前で見た民俗学者・田中忠三郎さん(むつ市出身、1933〜2013年)のこぎん展示に衝撃を受け、こぎんの世界に。こぎん刺しを広く知ってもらうため、より気軽に、また、違う分野からも関心を集めたいという思いで、三越伊勢丹デパートと組んでファッションブランドとコラボしたことも。

・今は、こぎん刺しキット作りもビジネスの主幹。プラスチックのメッシュや、紙に刺す図案を作ったり、伝統柄60種をデザインした「koginツリー図案」も制作中。(*注:10月30日に発売になりました)

・糸が布の後ろから前へと行き来して模様を作り出す、こぎん刺しの「構造」が美しいと感じた。そこで、構造が分かりやすいよう布をアクリル板に変えて立体化して見せる「アクリルkogin」を作った。違う素材、見せ方をすることで、こぎんファンを増やしたい。

・グラフィックデザイナーとして、商品のパッケージデザインや、星野リゾートの室内や設備にこぎんをデザインし、できるだけ多くの人の目に触れるようこぎんを「宣伝する人」。世界各地の人にもこぎんを知ってもらえるよう、活動していきたい!

 

角舘さん:「現代のワークスーツ」を作りたい

・弘前大学の在学中にこぎん刺しに出会い、弘前こぎん研究所に入ってこぎんを学び、生業とするようになった。

・昨年、全国の若手職人を検証する「Lexus New Takumi Project」に選出され、「仕事着=衣服」だったこぎんをモダンにアレンジして、後ろ身ごろの内側や背中の脇にこぎんを刺した「こぎんファーマーズベスト」を製作した。

・草木染めで糸を染め、多ければ日に8時間くらいも刺している。大きいタペストリーだと90㌢×120㌢。最近は、家具にこぎんを使おうと考え、5月の個展には座面にこぎんを刺したスツールも展示した。

・波長の合う人とコラボし、東北や首都圏でも展示をしている。「現代のワークスーツ(仕事着)」を作りたくて、リネンの服の作家さんとコラボしている。模様は、伝統柄を組み合わせたものを。「残るもの」を作っていきたい。

 

鈴木さん:活字を残す「雑誌」で、歴史と思いを次世代に

・こぎんの書籍が手芸の分野に限られている。こぎんの歴史を活字にして残さなければならない。次の世代に、昭和から平成にかけてどんな人たちがこぎんを刺してきたかを伝え、その思いをバトンタッチするために雑誌を作った。

・岩木山の麓に生まれた自分にとって、こぎんはルーツ。「麻だけを使え、木綿を着てはならん」という江戸時代の厳しい制約の中で、美しい模様を生み出し、残してくれた女性たちを誇りに思う。

・戦前から戦後にかけてこぎん刺し再興に功績のあった高橋一智・寛子夫妻だが、残念ながら、地元では忘れ去られた存在。夫婦二人三脚で古いこぎん刺しの模様を記録し、研究し、地元紙に連載した記事などは弘前市立博物館に収蔵されている。貴重な資料が遺されているということを知って、生かしていこうという願いを込めて創刊号で特集した。

・地元でクラフトイベントや愛好会の展覧会などが増えており、こぎん刺しの作品が目に触れる機会が増えている。こぎん刺しにとって歓迎すべきことだが、模様の工芸的な素晴らしさにだけ注目が集まることには少し違和感がある。こぎんの生まれた歴史的背景や風土、つまり麻やからむしといった植物から繊維をとって生地に仕立て、最後にようやく刺す時間が訪れたという、かつての庶民の暮らしぶりに思いを巡らせたい。そうであってこそ、こぎん刺しへの真の理解がうまれると思っている。

 

フレームキットやくるみボタン作りに挑戦

トークショー終了後は、山端さんと角舘さんによるこぎん刺しワークショップを開催。参加者の皆さんは、和気あいあいとした雰囲気の中、好みの布や糸、模様を選んでフレームキットやくるみボタン作りにチャレンジしていました。

 

古作こぎんの縫い目、擦れた糸に注目!

また、会場には弘前市の石田昭子さん(89)が津軽地方を回って収集された古作のこぎん刺し3点も、ご好意で展示させていただきました。昨年、ご自身の米寿の記念に、「集めた古作が世界へ羽ばたいて、こぎん刺しの素晴らしさが世に広がるように」との思いから名付けた「宙(そら)とぶこぎん展」を弘前市で開催された石田さん。雑誌「そらとぶこぎん」の名前の由来ともなった古作の周りには多くの人だかりができ、皆さん、細かい刺し目や擦りきれた糸の様子に見入っていました。

 

ご参加下さった皆さま、ありがとうございました!機会があれば、ぜひ“こぎん刺しの故郷”、津軽、弘前に足を運んでみてください。
 

☆ゲスト情報☆
 

山端家昌さん
http://kogin.net
https://www.facebook.com/kogin.net/

 

角舘徳子さん
https://www.facebook.com/profile.php?id=100006830885456
https://www.facebook.com/kirksdikdik/
https://lexus.jp/brand/new-takumi/2016/kakudate-noriko.html

 

鈴木真枝さん
https://www.facebook.com/soratobukogin/

 

*こぎんのモドコ(模様)についての解説やこぎんイベントなどの情報を発信している「koginbank」さんから、一部、写真をご提供をいただきました。また、当日の様子についてもご紹介いただいております。koginbank編集部のみなさん、ご協力いただき、ありがとうございました!

 

(編集部・小畑、撮影協力・嶋中さん)

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