私の好きなあおもり

【あおもりびと発見!】こぎん刺しで首都圏の人に青森の良さ、伝えたい!

こぎん刺しデザイナー:
藤本真紀子さん(青森市出身、東京都在住)

 

刺すことで教えられる「マデ」な暮らし

首都圏に数あるカルチャー教室で、「こぎん刺し」を教える講座は案外多い。その人気ぶりを表すように、藤本真紀子さんは千葉、神奈川、柏、宇都宮、町田、川崎と6ヶ所のカルチャー教室で指導している。4月からは大宮でも教室が始まり、蔵前、日暮里、町屋では1日教室も開く。平日日中の講座が多いただけに60〜70代の女性の参加が多いが、最近は40代女性も増えている。

 

「テレビや雑誌、雑貨屋でこぎん刺しを見て、作ってみたくなった」「青森に旅行した時に見て、素敵だと思い、自分で作りたくなった」など、習い始める動機はさまざまだ。「それくらい、こぎん刺しを体験したい、知りたいという人が首都圏にはいるということ。いま、津軽ではどのくらいの数の人が刺しているのか、気になります」と藤本さん。

こぎん刺しを初めて刺したのは、小学校のクラブ活動だった。母が編み物、祖母は和・洋裁を作るような手仕事が好きで、「“作る人”が普通に回りにいる環境」だった。青森商業高校を卒業後、通訳を目指して東京の専門学校へ。しかし、新聞奨学生として朝晩働きながらの勉強は厳しく、やむなく道を変えた。アルバイトをしながら、コツコツとこぎん刺しを作る様子を見た知人に、「作ることを仕事にしてみたら」と勧められた。

 

古い図柄を勉強しながら、作品を作っていると、知人を通してカルチャーセンターから「こぎん刺し教室を開かないか」というオファーが舞い込んだ。自身にとって“青春の街”だった青森市の新町が、帰省する度に寂しくなっていく様子も気掛かりで、青森への思いも高まっていた頃でもあり、「こぎん刺しを通して、青森の自然や歴史、物語を伝えたい」との思いで、講師として指導するようになった。

 

ひたむきに 布と糸に命吹き込む

2016年から、頂に雪をかぶった“蒼い八甲田”と赤いりんごを組み合わせた「実りの祈り」シリーズを作り続けている。今年1月末、カルチャースクール講師の作品を一堂に集めた展示には、春夏秋冬を表現した4枚組の額絵「実りの祈り」を出展した。画面の半分を占める「八甲田」部分は、春の絵には再生、進化の意味を持つ蝶を用いるなど季節ごとに刺し方を変え、昔からの図柄で桜の花や氷柱も、自分なりに表現してみた。「古い柄を刺していると、古いものの良さと、デザインの完成度の高さを改めて実感します」

ブランド名「MITTSU・DO・MADENI(みっつ・ど・までーに)」は、「みっつど=集中して、みっちり」と、「までに=丁寧に」という意味の津軽弁。「私はちゃかしで、すぐ手を抜くタチだったので、こぎんを仕事にする時、までに暮らす、までに刺すことを自分に課したんです」。作品は、世界の手仕事を集める東京・谷中のギャラリーで販売しているほか、Webサイトなどからオーダーも受け付けている。

 

刺し続けて目が疲れると、遠くを見て少し休み、また刺し始める。「棟方志功さんのように、布を近くで見るようになっても頑張ります。長島小学校の先輩なんです、志功さんは。大先輩のように、そして家族のためにひた向きにこぎん刺しの着物を作っていたかつての女性たちのように、ひたすらに作り続けていきたい」。手で刺すと、ただの布と糸に命が吹き込まれ、「大事なもの」になる。そんな手仕事が生まれた青森をこよなく愛し、その良さをこぎん刺しを通して伝え続けている。

MITTSU・DO・MADENI
http://www.mittsudomadeni.com/index.htm

the ethnorth gallary(ザ・エスノースギャラリー):藤本さんの作品の委託販売先
東京都台東区谷中3-13-6
Tel 03-5834-2583 / Fax 03-5834-2588
営業日:火〜日曜 11:00〜19:00
(月曜定休、月曜が祝日の場合は営業)
http://ethnorthgallery.com

(編集部・小畑)

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