私の好きなあおもり

【あおもりびと発見!】「誰も見たことがない『ねぶた』」を東京で展示!

東京「目黒雅叙園」の宣伝広報担当にして大の青森ファン:
芳賀尚賢(なおまさ)さん(東京都在住)

 

全国から集めた「和のあかり」を文化財「百段階段」に展示
目玉は、ねぶた師の魂がこもった「ねぶた」!

 

「ミニチュアねぶたの展示じゃイヤなんです!誰も見たことがないものをやりたいんです‼︎ 」

2015年春、青森市を訪ねた東京・目黒の結婚式場「目黒雅叙園」のマーケティング部 宣伝・広報グループマネージャーの芳賀尚賢さんは、ねぶた師集団「ねぶた屋 」の面々を前に、熱っぽくそう叫んだ。その夏、年間何度かのイベントで開放している「百段階段」とそこに続く7つの部屋を会場に、全国の伝統的な明かりを集めた「和のあかり×百段階段 」展を開催することが決まっていた。企画した芳賀さんがその目玉となる展示にしたいと思ったのが「ねぶた」であり、その製作を依頼するための訪問だった。

絵画や彫刻などの美術品2500点を惜しげもなく展示した壮麗豪奢な館内の様子から「昭和の竜宮城」とも呼ばれる目黒雅叙園。その中でも、かつて料亭として使われ、木造建築としての価値も高い「百段階段」は、東京都有形文化財に指定されている。その文化財空間の明かりを消し、日本の伝統的な明かりで暗闇を照らそうと考えた時、和紙を通した“巨大なあかり”であり、度肝を抜く迫力を持つ「 ねぶた」は必須だった。

実現に向けた、あふれる熱い思いはある。しかし、ねぶた師の知り合いがいるわけではない。ネットで情報を集めて青森市を訪れ、青森ねぶた若手製作集団「ねぶた屋」のメンバーに会った。「小さいものなら作ってもいい」というねぶた師に、「いやいや、誰も見たことがないものをやりたいんです‼︎ 」と駄々をこね、熱苦しいほどの思いのたけを語り続けた。県内のメディアを訪問し、協力を仰ぐ芳賀さんの姿を見るうち、ねぶた師たちも本気になった。

ねぶたの展示場所として考えていたのは、7つの部屋の中でもっとも絢爛豪華な絵で彩られている「漁礁の間」。派手な室内の装飾にも、ねぶたなら負けないと考えた芳賀さん。その意を受けた平均年齢33歳の若手ねぶた師4人は、日展や帝展の審査員級の絵師が描いた絵と“競演”することになると聞き、ますます意欲を燃やした。

とはいえ、高さ5メートルのねぶたに対し、部屋の天上高は3.5メートル。そのままでは入るはずがない。でも、「本物」を見せたい…。考えた結果、「入るものを入れよう!」と、実物大のねぶたの面を四つ、盃、腕など「パーツ」を展示した。

7月、会期が始まると、全国の明かりを集めた展示は評判を呼び、中でもねぶた囃子が流れる中、人の背丈を優に超える迫力ある面などを間近に見ることができるねぶたの展示は大きな話題になった。展示は1ヶ月で6万人の観客を集めるほどの大盛況だった。

終了後の8月、青森市を訪れた芳賀さんはねぶた師と再会し、初めてねぶた祭りを観た。「お囃子とハネトとねぶたが一体化した地響きのような、街を震わす雰囲気に飲み込まれた」

生の祭りの迫力を肌で感じた経験は、2年目の展示に生きた。「 2度目は、前年を上回るものでなければならない。より、度肝を抜くものを。そして、より美しいものを 」。そう、自らに高いハードルを課し、昨年、12だった参加団体を36に増やし、エントランスに広島県柳井市の金魚ちょうちんを棚状に大量に飾り、通路には五所川原立佞武多や秋田の竿灯など東北の夏祭りも展示した。

「 ねぶた 」展示もパワーアップさせた。昨年も製作に携わった立田龍宝さんと、その師匠の内山龍星さんに、ねぶたの題材として描かれることが多い鬼や火、そして2人の名前に共通する「龍」のねぶた製作を依頼。初めて競演することになった師弟は、閻魔大王をにらみつける赤鬼、真っ赤な炎、そして真っ青な龍による「勧善懲悪 閻魔」を製作。しかも、面は通常の2倍の大きさで、昨年以上の迫力で見る人に迫ってくる。「極彩色で彩られて天井の“天国”に対して、下には“地獄”というシャレが利いた展示となりました」

「祭り」「アート」「職人」「伝統芸能」の4つのジャンルを中心に、30を超える出展者が一堂に会した。和紙や花火、江戸切子に切り絵などで、昨年を上回る多様な「あかり 」を揃えた展示は、7月1日のオープン以降、昨年を大きく上回る数のお客様で賑わっている。

8月12、13日には、雅叙園のエントランスで青森のねぶた囃子、跳人の団体によるねぶたパフォーマンスを行った。イベントを進行していた芳賀さんは、途中で囃子方に舞台裏に引き込まれ、再びマイクを握る時はねぶた衣装で現れた。芳賀さんのねぶたに対する並々ならぬ熱意と展示前の苦労を知る囃子方、跳人の皆さんからの敬意のこもったサプライズプレゼントに、芳賀さんは相好を崩しっぱなしだった。

 


そんなエピソード満載の展示も、残すところあとわずか。「日ごろは写真撮影禁止の部屋が、この展示の間だけ、撮影することができます。ぜひ、ねぶたをはじめとした和のあかりの素晴らしさを体感して下さい 」と、芳賀さん。もうひと踏ん張り、伝統の良さを伝え続ける。

 

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☆イベント情報☆

「和のあかり×百段階段2016」
2016年7月1日(金)〜8月28日(日)
【日曜日~木曜日】10:00~18:00(最終入館17:30)
【金曜日・土曜日】10:00~19:00(最終入館18:30)
当日券 1,200円

目黒雅叙園(目黒区下目黒1−8−1)
問い合わせ 目黒雅叙園 TEL 03-5434-3140

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