私の好きなあおもり

《あおもりびと発見!》菜の花の景観を守る NPO法人菜の花トラストin横浜町

一面の黄色。

青空と、林の緑に映える、まばゆい菜の花。

nanohana

この光景に心を奪われない方はいないと思います。

 

ここは青森県下北半島の入口に位置する横浜町。2007年まで19年連続で菜の花作付面積日本一を誇り、今年も158ヘクタールの作付で、国内1、2を争う菜の花の一大産地です。

 

日本一の産地が抱えた危機

横浜町が初めて日本一の作付面積になったのは1989年。それはたゆまぬ地元の努力の成果が実ったため…ではなく、全国的に菜の花の作付面積が減少し続けた中で、相対的に横浜町の順位が上がったためでした。

 

横浜町の菜の花は、その大半が個人農家の作付で、景観のために作付されているものではありません。そのため、菜の花から採取されるナタネの価格が安価で推移すれば、それだけ作付は減少します。減少傾向は横浜町も同様で、1968年に750ヘクタールを誇った作付面積は、1988年は最少の44ヘクタールまで減少。ナタネが利益になる仕組みを確立させない限り、菜の花の作付面積は減り続ける状況でした。

毎年9月のナタネ撒き作業

 

そこで2002年に立ち上がった町民運動が「菜の花を守り育てる活動」=「菜の花トラスト運動」です。「地域の景観を守り、育てていきたい」との思いで、町民7人で始まった「菜の花トラストin横浜町」の取組。初めは地元の小中学生と休耕地を菜の花畑に生まれ変わらせるプロジェクトとともに、全国から支援してくれる会員を募り、返礼でナタネ油を送る活動からスタートしました。

 

ノウハウなく手探りの活動

しかしその活動はまさに手探り。資金もなければナタネ油生産のノウハウもない中でスタートし、休耕地の耕作と並行して搾油・精油技術の向上に努める日々が続きます。長年原野と化していた休耕地は木の根が張り、一筋縄ではいきません。ナタネ油の生産も、品質が安定せず苦労の連続。それでもノウハウを積み重ねる中で、手作りならではの利点を生かした生食可能な高付加価値のナタネ油に進化していきます。

ナタネの搾油機

ナタネの搾油機

 

ナタネ油の作業工程を見学させていただきましたが、使用するナタネは無農薬栽培で、天日乾燥したナタネのみ。瓶詰めまで、搾油と精油に1回ずつ機械を使う以外はすべて手作業で行い、徹底的に手間暇をかけて仕上げます。とろーりとろーりと搾油、精油される加工場には特有の香りが漂い、仕上がったナタネ油はまさに気品あふれる黄金色でした。

黄金色に輝くナタネ油

黄金色に輝くナタネ油

 

近年は作付面積首位を奪還

活動母体である「菜の花トラストin横浜町」は2008年にNPO法人(現理事長・宮 茂さん)へ改組。取組の成果もあり、近年は再び作付面積全国首位を奪還するなど、菜の花の里として全国から観光客も訪れるようになりました。

その圧巻の菜の花の景観を楽しめる「菜の花フェスティバル」は毎年5月に開催され、今年で26回目を迎えました。毎年大人気の「菜の花大迷路」は面積が2.6ヘクタールと例年から倍増。開花宣言が例年より早まり、花が長持ちしたこともあって、期間中は約7万人の人出となりました。

宮理事長㊧と奥様の桂子常務理事

 

近年では、ナタネ油の機能性に着目し、さまざまな化粧品の開発も行っている菜の花トラスト。売上で耕作放棄地等にナタネ栽培や新商品の開発などの取組を行い、これからも菜の花を守り続けていくそうです。

 

(編集部S)

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