本格的インドカレーで、学生の胃袋満たす

首都圏等で活動する「あおもり~な」(青森思いの県人等)を紹介します
2016.6.2更新

本格的インドカレーで、学生の胃袋満たす

あおもり〜な 014 一戸 和彦 (いちのへ かずひこ)さん
  • 40代
  • 弘前市出身、弘前南高卒
  • 東京都
  • カレー店経営

“都内で一番ナンを食べる店”

早稲田大学の北門から東に20歩ほどの位置にあるインドカレーショップ「ターリー屋 西早稲田店」。学生や留学生で賑わう店内には学生が持ち込んだ部活動のチラシや大学のポスターなどが貼られており、まるで「学食」。店長の一戸和彦さんは「関東を販売圏に持つ製粉業者さんから、都内で一番ナンを食べる店と言われています」と嬉しそうに話す。

ターリー屋を開くまで、多様な職種を経験してきた。高校卒業後に憧れの西武鉄道(東京)に入社したものの、体を壊した母親を心配して20歳で帰郷。個人病院の受け付け、再度上京して製パン会社での製造、血液の検査会社での営業、ケーキ屋でのマネジメントと遍歴を重ねた。

そして30代後半、「40歳までに自分の店を持ちたい」との独立心が湧き、選んだのはフランチャイズのターリー屋だった。背中を押したのは、再び上京するか悩んでいた20代の頃、中学校の同窓会で恩師に言われた言葉だった。「おめは、人柄的に商売が向いていそうだけどな。本当にやりたいことは、この先でも見つかるから、その時々に思ったことを一生懸命やっていなさい」

 

「ジャパニーズ・ドリーム」抱く職人に支えられ

インドカレーのお店を持ちたいという思いには、具体的な理由もあった。そもそも「フワフワした物を触るのも、食べるのも好き」なのだ。製パン会社の製造ラインでは生地をこねる工程が大好きだったし、肉まんも大好き。小さい頃からカレーも好きだった。ちょうどその頃、ターリー屋が3年の短期修業で独立できるシステムでフランチャイズ展開を始めたことを知り、入社。休みも返上してカレーを作り、ナン作りの技術も身につけ、経営も学んだ。

出店の地に学生の街、早稲田を選んだ。ターリー屋としては学生が多い地域への出店は初めてだったが、自分の人生をかけたスタートだけに挑戦する気持ちが強かった。「自分が行けなかった大学への憧れがあったし、ナン食べ放題のターリー屋で、懐が厳しい学生の胃袋を満たしてあげたかった」と一戸さん。

従業員4人は全員ネパール人だ。現地で10年以上の調理経験を積んで来日している職人達だけに技術は確かだが、接客に欠かせない「おもてなし文化」を理解してもらうのに時間がかかった。「でも、みんな現地の家族に仕送りしたり貯金するという“ジャパニーズ・ドリーム”を抱いて来ているので、よく働くし、日本語も覚えてくれました。今では家族同様です」。忙しいランチタイムも、スタッフと呼吸を合わせ、スムーズに注文、接客をこなす。

いつか青森県内にお店を出したい

食べ盛りの学生の注文、テイクアウトやお弁当のオーダーに応えるべく、毎日30〜40キロの生地をこね、バターチキンカレーやキーマカレーなど5種類ほどのカレーを仕込む。

実は、「ナンを焼ける数少ない日本人」の一人だ。備長炭を熱源とする窯の内部は300度という高温で、内壁にナンを張り付けるにも2、3秒も手を入れているのが限界。修行時代、何度も窯のへりで腕に火傷を負いながらも生地の扱い、窯での焼きを習得した。

夢は、青森県内にターリー屋を開くこと。「本格的なインドカレーと、自分が焼くナンを青森の皆さんにも味わってほしい」。そして、もうひとつ。「60歳になったら引退して、高校卒業後もずっとつながっている友達と、酒飲んで、古い写真を見ながら思い出話をするのが楽しみ」。弘前城の花見で、ねぷた祭りで帰省するたびに会う友人とのつながりが、過酷な仕事をこなす力となっている。

 

◆次回のご登場は…
「西新宿で刺し身が美味しい居酒屋を経営する八戸市出身の戸田英明さんです」(一戸さん)

編集後記:300度の窯で1分半、ナンを焼く姿に感激!

取材が終わる頃、ランドセルを背負った女の子が店内に入ってきました。勤務時間が終わった男性スタッフと一緒に帰る時、優しく声をかける一戸さん。「スタッフは家族同様」という言葉に納得しました。

今回、フワッフワの種生地を手で広げ、ナンを焼く技を初めて間近に見せていただきました。炭で内部を300度に保っているに窯は近づいただけでも熱く、窯の内側に貼り付けられたナンは見る間にプクプク膨らみ、1分半ほどで焼き上がりました。ここまで短時間勝負の仕事だったとは!

せっかくなので、チキンバターカレーとホウレンソウカレーのランチセットをいただきました。チキンバターカレーはマイルドな辛さ、ホウレンソウカレーはヘルシーな味わいにしてスパイシー、焼き加減バツグンのナンもとても美味しかったです。このカレーとナンで、青森の皆さんをうならせる日が待ち遠しいです。(編集・小畑)

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