スポーツの楽しさ、仲間の大切さを知って

首都圏等で活動する「あおもり~な」(青森思いの県人等)を紹介します
2015.12.28更新

スポーツの楽しさ、仲間の大切さを知って

あおもり〜な 012 三上真実 (みかみまなみ)さん
  • 20代
  • 弘前市出身、柴田女子高校、東北女子短大卒業
  • 東京都在住
  • 保育士

スポーツに特化した幼児園で指導

バスケットで鍛えた体力、気力、積極性で、スポーツ指導に力を入れる民間施設「バディスポーツ幼児園江東」(東京都江東区)で指導にあたる三上真実さん。運動会にキャンプに登山、スキー合宿など、「毎日が行事」と苦笑するほど忙しい毎日も、元気な笑顔で子どもたちに接しながら、成長を見守っている。

小学4年から部活動で始めたバスケットが大好きで、トップレベルで自分を鍛えようと県内で一番強かった柴田女子高校に入学。すべてのポジションをこなし、東北女子短大でもキャプテンとしてチームをまとめながらプレーした。小さい頃から年下の子の面倒を見ること好きだったから、大学では幼児教育を専攻し、就職でも迷わず「保育士」を選んだ。求人の掲示板で見つけた「バディ」「スポーツ」という名前に、青森県内にはないスタイル、しかもスポーツ指導の経験も積めることにひかれた。チームスポーツで自分が育てられたという思いもあり、子どもたちに「バディ=仲間」を思う気持ちを持ってほしいという願いもあった。

採用枠は狭き門だったが、すんなり内定をゲット。両親は「東京さ行ぐんだら、ちゃんと勉強してこい」と応援してくれた。2011年の就職と当時に担当した3歳児を卒園まで持ち上がり、今年は2度目の年長組担当。年間行事も把握し、年齢ごとの対応もつかめてきたので、忙しいけれどやりがいを感じている。

子どもたちの入園動機はさまざまだ。アクティブな親御さんが「子どもにあった運動を見つけて、能力を伸ばしてあげたい」と思ったり、運動が苦手なお母さんは「子どもはスポーツができるようになってほしい」と願ったり。2020年の東京オリンピック開催が決まり、首都圏にある系列の7つの園への問い合わせは増えており、スポーツへの関心の高まりを感じている。

あきらめずに挑戦し、課題乗り越えて

朝7時45分。自宅から25分ほど自転車をこいで園に着くと、子どもたちが集まる前に授業の準備をし、当番の日には園バスに乗り込んでお迎えにあたる。運動、お絵描き、芸術、英語などのカリキュラムがあり、木曜日以外は毎日1コマ、運動の授業があり、体操、フットサル、水泳など幅広いジャンルの運動を子どもたちは経験する。

「イチ!二!サン!シ… 」。担当する年長組の体操の時間。整然と並んだ27人の子どもたちが、大きな声でカウントしながら、念入りにストレッチすることから始まる。スポーツ重視の園らしい「卒園課題」がある。三点倒立と逆上がり、6段の跳び箱の開脚跳びだ。様々なスポーツでの基礎となる運動能力、バランス感覚などを高める課題に、子どもたちは真剣に取り組んでいる。

鉄棒の前に一列に並んで集中力を高めると、右手を挙げて「ハイ、お願いします!」と元気に挨拶。鉄棒を握り、マットを蹴って足を振り上げる「逆上がり」ができるようになったら、鉄棒上での腕支持から後ろ回りする「空中逆上がり」、そして両手で膝を抱えて後方に回る「だるま回り」へとステップアップする。上手にできない子には「せーの!」「ガンバ!」とみんなで応援し、うまくできると拍手で頑張りをたたえる。教えようという思いやりの心と、教えてもらったことへの感謝の気持ちが育まれている。

鉄棒、跳び箱、マット運動と子どものそばで補助をする三上さんは、危険やケガがないよう細やかに目配りしながら、うまくできなかった子に「どうして転んだと思う?」「跳び箱の前の方に手をつかないと危ないよ」などと声を掛ける。うまくいかなかった動きを振り返ったり、上手にできたことは繰り返してできるように。あきらめずに挑戦し、「やればできる」という経験と自信を持てるよう指導している。

いつか青森に帰り、スポーツや幼児教育の場に

幼児園では、季節や成長に合わせたイベントが目白押しだ。3歳児は「経験する」ことから始まり、年長組になると高度な課題に挑戦する。7月、山梨でのサマーキャンプでは富士山の5合目から7合目まで登り、10月に7園対抗で行うスポーツフェスタではかけっこで300メートルを走り切る。冬のスキー合宿では、ポールの間を滑り降りるタイムレースにも挑む。弘前育ちながら、スキーの経験が少なかった三上さんは、研修や子どもたちとのスキー合宿で腕をあげ、今は両足をそろえたパラレルで滑れるようになった。その経験をもとに膝の曲げ方や重心の位置など、一緒に動きながら子どもたちに伝えていく。「言葉でうまく表現できない部分は、とにかく一緒に動いてマネをしてもらいながら、習得してもらう。でも、まずは運動する楽しさを知ってほしい」

春には泣いてばかりだった3歳児もサマーキャンプや運動会を終えた頃には集団行動に慣れ、一人でできることが増えるなど、成長の様子が目に見えて分かる。さらにこの春、卒園生を送り出したことで、幼児教育にあたる責任の重さも、より強く感じるようになった。集団行動がとれない、授業中に座っていられない、先生の話を聞けないといった「小1プロブレム」にならないよう注意を払っている。「普通の幼稚園、保育園ではできない場面をたくさん経験して、あたたかく協調性のある人間関係を築けるようになってほしい」

慣れない東京での生活、仕事も5年目。就職した年は要領が悪くて仕事が溜まり、細かい仕事を頼まれたり、自分のクラスの仕事も多く、短大の先生によく電話で相談した。一緒に上京した仲間たちとのおしゃべりや、弘前に帰省した時に同じ保育の職についた友達と情報交換するなどして、乗り切ってきた。
いずれ、青森に帰りたいと考えている。「青森が好きだし、やっぱり青森での暮らしがあずましい。帰ったら、バディでの経験を幼児教育に役立てたい。青森は自然が豊かでいろいろなスポーツが楽しめる環境。スポーツ好きの子どもたちが増えるよう、お手伝いしたい」。今も続く自身の仲間とのつながりに感謝しつつ、子どもたちにもスポーツを通して豊かな経験が増えるよう、応援していこうと思っている。

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「次は、千葉県市川市でとっても素敵なスイーツのお店を開いているパティシエの対馬達真さんです」(三上さん)

<2015年10月29日 インタビュー>

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編集後記:くったくない笑顔、身体を張った指導で人気者

取材にお邪魔したバディスポーツ幼児園江東は、各教室の扉がそれぞれ青、黄、黒、緑、赤とオリンピックカラーに色分けされていて、自然にオリンピックが意識される演出。園内にはグラウンド、体育館、小さいながらプールもあり、スポーツ大好きな私にとってもワクワクする環境でした。

卒園生には、“市民ランナー”で知られるマラソンの川口優輝選手、プロサッカーの武藤嘉紀選手といった有名スポーツ選手もいるとのこと。入園中はもちろん、小学校での部活動が始まるまでの低学年の時期にも、継続してスキルアップできる器械体操、バスケットボール、テニス、フットサル、陸上などのスポーツクラブ、スクールも放課後の時間帯に開設しており、適性や興味関心に合わせ、体力をつけながらスキルアップをはかるプログラムが組まれていることに驚きました。

初めてお目にかかった三上さんが、またとっても元気が良く、くったくない話ぶりで良く笑い、「こんな素敵な先生は、子どもたちに人気あるはず」と深く納得した次第。合宿やキャンプで子どもたちが長距離を歩く時にも、自転車で前へ、後ろへ移動して体調や表情を見ながら、安全確認もするとか。一事が万事、そんなふうに“体を張った”指導が、子どもたちの信頼を得ているように思えました。

担当する教室でお話を伺っていると、小さな女の子が二人、窓から顔をのぞかせました。「クラブの練習、終わったの?気をつけて帰ってね」と三上さん。今年3月まで担任していたその二人は、入学後もバスケットのクラブに参加していて、時々、教室に立ち寄るという。三上先生に会いたくなるんでしょうね。

「目屋の近くに住むおばあちゃんが大好き。初孫の自分を小さい時からかわいがってくれるから、帰るたびに顔を見せて、一緒に話をしているんです」。いつの日か、三上さんが青森で保育士をするようになったら、青森の子どもたち、より一層たくましくなるにちがいありません。そんな日が楽しみです。(編集・小畑)

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