“突き詰める体質”で、描く道を極める

首都圏等で活動する「あおもり~な」(青森思いの県人等)を紹介します
2015.5.13更新

“突き詰める体質”で、描く道を極める

あおもり〜な 007 柿崎こうこ (かきざき・こうこ)さん
  • 40代
  • 青森市出身
  • 東京都在住
  • イラストレーター

上京して数年後に気付いた
やりたいのは、「イラスト」だ!

キュートでオシャレな女の子、スマートな男の子のイラストで女性誌や美容、健康関連の書籍で人気が高く、「あおもりっていいなぁ」FBにもご協力くださっている柿崎こうこさん。子どもの頃から似顔絵や漫画を描くことが好きで、雑誌に投稿してはいたものの、高校卒業を前に消去法で決めた就職は、青森市内での“デパガ”。しかし、胸にはくすぶる思い。3年後、「やっぱり絵を勉強したい!」と、父の反対を押し切って上京した。

選んだのは、自由な校風が人気のセツ・モードセミナー。しかし、半年に1度のくじ引きという選抜システムに阻まれ、入学できたのはナント、3年半後!その間、食費も切り詰め、ホテルの配膳係、試食販売、飲食店の厨房などのバイトで学費と生活費をまかないつつ、イラストレーションを学ぶ半年間の夜間学校へ。「やりたいことはデザインではなくイラストだ!」と、明確になった。

入学したセツ・モードセミナーで仲よくなった同い年の友達は既にメジャーな女性誌でイラストレーターとして活躍していて、その姿がまぶしかった。「どうしたら、雑誌の仕事ができるの?」。率直に聞くと、自分の作品ファイルを持って出版社に売り込みに行くことを教えられた。「そうか!自分から行けばいいのか!」

書店で雑誌をチェックし、電話帳で見つけた出版社に電話を掛けては編集者にアポを取り、絵を見てもらう日々。10数社に売り込んだ末に舞い込んだ初めての仕事は、女性雑誌「MiL」に掲載する、失恋して膝を抱える女の子の絵。「当時は今とはまったく違うテイストで、目もリアルな感じで。でも、この依頼の電話を切った後は、部屋の中で飛び跳ねたくらい嬉しかった」

退路を断って、仕事に全力投球
美容と健康を極める「美人道」が開けた!

初仕事の後、依頼はコンスタントには続かず、2年間在籍したセツ・モードセミナーを卒業した後、思い切ってニューヨーク10日間の一人旅へ。帰国後は、かの地で見た「伝えたくてたまらないもの」を描きためたポートフォリオを持って、気合いあふれる売り込み再開。編集者のアドバイスやリアクションをノートに記し、お礼を込めて自作のフリーペーパーを送り、そして退路を断つためにアルバイトを辞めた。

依頼はすべて引き受ける、小さな仕事でも全力で描き、締切は必ず守る。そういった自分の決め事を守るうちに依頼が少しずつ増え、一日中ペンを握る日もある中、オリジナルの作風ができあがっていった。“開店休業状態”をようやく脱したのは27歳も終わる頃だった。

ある美容取材に同行し、知らないコトだらけの美容テクニックや商品への関心が膨らんだ。そうなると、“とことん突き詰める体質”が全開に。仕事や街で出会う素敵な女性たちを鋭い観察眼でチェックし、情報を集め、自ら試して「いい!」と思ったものを人に勧めていると、美容関連の仕事が舞い込むようになった。

2003年、「GoGo!美人道」(双葉社)を出版。化粧やエステなどによる見た目のキレイだけでなく、ヨガや運動、睡眠や食事を見直す「カラダの美人」、恋愛、精神面の余裕を考える「ココロの美人」という切り口。率直な感想、詳細な情報が盛り込まれた「体あたりイラストエッセイ」は女性たちの共感を呼び、3作続いた。

「1冊目の本を依頼してくださった方は、実は初めての仕事の依頼者でもあります。駆け出しの私に『やらせてみよう』と任せてくださった方々のおかげで、今があります」

15周年を機に個展を開催
背筋を伸ばし、「自分の絵」を描き続ける

イラストレーターとして15年の節目を迎えた2012年4月、表参道のギャラリーで初めて個展を開いた。タイトルは「The Beauty of Maturity」。前年に訪れたフランス、モロッコで出会った、凛々しく、たたずまいの美しい成熟した女性の美人像を描き、海外で探したアンティークやヴィンテージの額で飾った。瀟洒なアンティーク小物が並び、アロマが焚かれた会場を訪れた人は、もてなしの心があふれる「こうこワールド」をリラックスしながら楽しんでいた。9月には青森市新町のギャラリーで“里帰り個展”を開催。書籍出版の際にお世話になった方や家族、友人、イラストエッセイを読んでくださった方など、多くの人が足を運んでくれた。

40代に入ると、「GoGo!」だった美容&健康法は、ゆるやかでシンプルなものに。一汁二、三菜の食事を基本に、階段の上り下りや歩くといった基本的な運動で体力を保ちつつ、内面の豊かさを深めることに関心が向いている。夜はリラックスすることを心がけ、最近ではワインと一緒に、取材で知った青森県内で作られているプロテオグリカン飲料を飲むのがお気に入りだ。

振り返ると、駆け出しの頃の孤独を支えてくれたのは、青森の友達とやりとりしたたくさんの手紙と電話でのおしゃべり。「いけるとこまでやってみればいい」と背中を押してくれた母と、見守ってくれた父。最近、田園都市線の桜新町で開かれるねぶた祭りに出かけ、友達に熱くねぶたを自慢している自分に驚いた。いつの間にか、“青森スイッチ”が入るようになったようだ。

「これからも、いただいた仕事に全力で応えたい。人とのご縁を大切にしながら、絵を描くという基本を極めたい」。すっと背筋を伸ばし、大きな歩幅で歩き続けている。

<2015年4月16日 インタビュー>


編集後記:美しい姿勢ーその体幹は空手で鍛えた?!

1月から続いてきたこの企画。FBページのカバーイラスト、ただいま構築中のウェブサイトなどにもイラストをご提供くださっている柿崎こうこさんに、晴れてご登場いただくことができ、編集担当としては嬉しい限りです!

今ほどインターネットが発達していなかった約20年前、ツテもコネも仕事もなく、青森からたった一人上京した時は、さぞかし心細かったのではと、お話を伺って想像しました。しかも、入りたい学校の半年に1度のくじをハズレ続けて3年半だなんて、よくぞ道を見失わず、初心を貫いたものだと感心しきりでした。ここに書き切れなかった上京間もない頃の武勇伝は、イラストはもちろん、エッセイも読みごたえある「GoGo!上京 ユメ見て歩け」(双葉社、青森県推薦図書認定)をご覧下さい。

お話を伺う最中も背筋が伸びて、姿勢が美しい柿崎さん。「運動はあまり好きじゃない」とおっしゃいますが、なんのなんの!高校時代は空手でインターハイまで進んだのちに県の強化選手に選ばれ、スポ根100%の青春時代を送っていたという“猛者”。「美人道」の中ではヨガに熱心に取り組んでいたり、海外旅行に出かけたタイのワットポーという寺院で、ルーシーダットンと呼ばれるタイ式ヨガをやってしまうあたり、今も体にはスポ根が宿っていらっしゃると思えて仕方ありません。

仕事が順調に流れ始めた頃、ある人に「色をもっと勉強しては」と言われて以来、身の回りの色を意識するようになったとか。パリ、南フランス、スイス、バリ、ネパール…など、海外の街や風景から刺激を受けながら、そして郷愁が高まってきた青森と往復しながら、ますますステキな絵を描いてくださることでしょう。(編集・小畑)

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