BAR「キャパドニック」

首都圏等で活動する「あおもり~な」(青森思いの県人等)を紹介します
2015.3.17更新

BAR「キャパドニック」

あおもり〜な 005 原子内昌樹 (はらしない・まさき)さん
  • 30代
  • 八戸市
  • 東京都
  • バーテンダー

映画「カクテル」で知ったバーテンダー
「やるしかない!」と思い、一直線

21歳で上京、飲料品の配達でさまざまなお店を回りながら、落ち着いた大人の雰囲気が漂うバーがカッコよく目に映った。レンタル店を回った時、トム・クルーズ主演の映画「カクテル」のDVDが目に入り、別な日には配達中の車のラジオから映画「カクテル」の話が流れた。DVDを借りて見て、ハマった。「バーテンダーってカッコいい!やるしかない」。まずはお金を貯めようと八戸市の実家に戻ると、とあるオーセンティックバーがバイトを募集していた。「何かに導かれているのかも」。そう思いながら、早速応募。カウンターの中に立てることになった。

勤めた小さなバーはなかなかに賑わい、お客様とお酒について話すことが楽しくなった。カクテル、ブランデー、ウイスキー…。知れば知るほど、それぞれの製造方法や銘柄、人気の蒸留所について知りたくなり、本やネットでどんどん知識を吸収し、“酒オタク”の道をまっしぐらに進んだ。

10ヶ月勤めた後、再び上京。赤坂のバーで1年、新橋のウイスキー専門店で3年働いた後、新橋の新店舗を任された。「バーテンダーを目指した時から、自分の店を持とうと思っていた。東京はいいバーがあり、たくさんのバーテンダーにも会えるから、勉強になる」

目標を持ってから8年近くが経ち、新橋に居抜きで使える物件を見つけたが、開店資金となる貯金はそれほど増えていなかった。その代わり、稀少なシングルモルト、終売になったバーボン、オールドボトルなど約100本が手元に溜まっていた。「これがあれば、店は開ける」。父や親戚に出世払いの資金援助を頼み、2014年5月、新橋に店を構えた。名前は「BAR キャパドニック」★。大好きなスコッチウイスキーの銘柄を冠した。

新橋のサラリーマンに「命の水」を
一期一会の香りや味を楽しんで

平日の開店は午後6時。とはいえ、BARに客足が向く時間帯は遅い。アンダーな照明、静かなジャズが流れる中、グラスを磨き、アイスピックやナイフで角氷を大振りな丸や角にカットしながら扉が開くのを待つ。

店名に選んだ「キャパドニック」は、2003年に閉鎖されたスコットランドにある蒸留所の名前であり、そこから生まれたウイスキーの名前でもある。ゲール語で、ウイスキーとは「命の水」、キャパドニックは「秘密の井戸」という意味。サラリーマンが多い新橋で、ゆったりと時間を味わいながら疲れを癒し、明日も頑張ろうと思えるような「命の水がわき出る秘密の井戸」…。そんな場所にしたいという思いを込めた。

ブレンド用に長く用いられたキャパドニックは、単独で味わうシングルモルトとして発売された期間は長くない。「でも、その香りに出会った時、『これが麦の酒か?』と思うほどフルーティーで華やかで、その香りをかいでいるだけで幸せになれた。数あるお酒の中で、特にウイスキーは香りや味の幅が広いから面白い。同時期に樽に詰めた同じ銘柄でも、一樽ごとに味わいが違います。お客様には、この一期一会の出会いを楽しんで欲しい」

そのために、微妙な香りをかぎ分け、舌に残る味わいの奥底を探るため、お酒に限らず、日ごろ口にするものを意識して味わい、分析している。そして、「生チョコやココアのような香り」「リンゴの蜜のような味わい」といった繊細な表現で、その魅力をお客様に伝えている。

駅前の賑やかなエリアから少し離れた路地に面するビルの4階。開店から10ヶ月が経ち、「こだわりの1本」を求めて隠れ家的なこの店の扉を開ける人が、少しずつ増えている。

400本のストックから、お好みの1杯を
「いい空間と時間」で新橋No.1のバーに

バーを訪れる人の目的はさまざまだ。一人静かに飲みたい人、友達や恋人とゆっくり話したい人、バーテンダーとお酒の話をしたい人…。そんな思いをくみ取り、お酒のセレクトと会話で、その人にとっての「いい空間と時間」を提供することがバーテンダーの仕事とわきまえている。

「バーは敷居が高いと思っている方も、気軽に遊びにいらしてください。甘さや辛さなどの好みと気分、重さ、軽さなど、ふんわり伝えていただければ、こちらでセレクトします」。落ち着いた声と話しぶりが、奥深い世界へと誘う。

初級者からマニアまで、幅広い要望に応えるためにストックしているボトルは約400本。その一部は、八戸市の実家に近い、階上の祖父母の家に預けてある。「小さい頃は毎週、海に釣りに行ったし、夏になると妹たちとばあちゃんの家に行き、海に潜ってウニを採って食べた。青森は自然が豊かで好きです。帰る場所があるのもありがたい」

メニューには、国産の黒毛和牛を素材としたコンビーフ、薫製した鴨のローストなど、これまた「職人的な味わい」の品が並ぶ。遠からず、青森県民のソウルフードの一つ、「源タレ」を使ったメニューや田子牛のステーキ、小さい頃に給食でも食べていたいちご煮など「青森のこだわりの味」も隠れメニューとして潜り込ませ、都内の人にじんわり伝えていきたいと考えている。

自称、「青森出身で一番ウイスキーを飲んでいる男」。長男だけに、将来は八戸にもお店を持って、往復できればとも考えている。でもその前に…。樽の中でウイスキーが熟成を重ねて味わいを増すように、人としてもっとレベルアップしたい。「この人が立つカウンターで飲みたい」とより多くの人に思ってもらい、「新橋でNo.1」と言われるバーになる。そのために、日々、修業を続けている。
(原子内昌樹さんの紹介、終わり)

「次は、新橋で料理屋を開いている大高さんです。青森の魚も地酒も揃っていて、何を食べても美味しいお店です」(原子内昌樹さん)<2015年3月2日 インタビュー>

 

編集後記

取材させていただいた後の土曜夜、カウンターにお邪魔しました。国内外のこだわりのクラフトビールも魅力的だったが、一杯目はウイスキーのハイボールをお願いした。薄張りグラスに注がれたシングルモルト、スコッチウイスキーの「バルベニー」12年ものは、香り豊かでまろやかな味わい。なるほど、本当のハイボールとはこんなにおいしいのか、と納得。

カクテルのオーダーが入り、シェーカーを振る姿も決まっている原子内さん。銘柄や蒸留所についていくつか質問すると、分厚い「シングルモルトウイスキー大全 」を示しながら丁寧に説明してくださいました。ウイスキー文化の深さとともに、原子内さんの知識の豊かさに感心しました。

カウンターの隣に座るスーツ姿の男性2人のウイスキー談義を聞くともなく聞きながら、グラスで揺らめくロックを眺めるのもオツなもの。お店で人気の黒毛和牛のコンビーフは、人気があり過ぎて、この日は品切れ。でも、鴨の燻製ローストもしっかりした味わいで、ウイスキーに合う一品。

最後にいただいた「グレンファークラス」21年もの。濃い琥珀色の“命の水”は時間の経過とともに香りは華やかに、トロリとした甘みにはコクが加わり、さすがの熟成感。

オーセンティックなBARという単語を空間で理解し、「大人の時間 」を静かに堪能できる素敵なBARでした。食べログでのウイスキー好きからの評価も高く、若きバーテンダーの存在感は、ますます高まりそう。今後の活躍が楽しみです。(編集・小畑)

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