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【つながりましたレポート】浅草で、津軽弁の詩朗読公演「津軽の光と陰」

街がクリスマスのイルミネーションできらびやかに彩られた12月25日(日)、東京・浅草のアミューズミュージアム イベントホールで、津軽弁の詩の朗読公演「津軽の光と陰」が開かれました。取り上げられたのは、青森県五所川原市出身で、作家として広く世に知られた太宰治と、同市出身の27歳で早世した方言詩人・木村助男(1916-1943年)。集まった皆さんは、対照的な2人の人生と津軽の気配が色濃く漂う作品世界に聞き入っていました。


主催したのは、青森市出身で東京在住のフリーアナウンサー・中村雅子さんと、東京都出身の津軽三味線奏者・山本大さんのユニット「朗読音劇社中」。中村さんが、五所川原市で木村助男作品の朗読活動を長く行っている下川原久恭さんと4年前から語りの仲間として共演していることから、初めて東京での公演で木村作品を取り上げることになりました。

木村助男は、昭和12年に横須賀海兵隊に入隊、同16年に肺結核で除隊帰郷。療養中に方言詩に出会い、主に津軽の風景、人を描いた作品を作り続け、未発表作品35編をまとめた方言詩集「土筆(べべこ)」が完成する11日前の昭和18年7月30日、急逝しました。


公演では、太宰作品の朗読をライフワークとしている中村さんが、山本さんの津軽三味線やギターの音色が響く中、太宰の短編小説「メリイクリスマス」を情感豊かに朗読。続いて、木村作品の中から、「綿雪(モロユギ)」「彼岸(シガン)」「故郷(マレトゴ)の春」「彼女(アレ)」などを紹介。中村さんの標準語での朗読に続いて、下川原さんが昔懐かしいなまりのある津軽弁で切々と読み上げました。

夕方公演では途中、太宰の孫である津島淳さんがステージに招かれ、「朗読という形で皆さんに作品を聞いていただくことを祖父はきっと嬉しく思いながら、照れ隠しに酒でも飲んでいるような気がします」と挨拶する一場面も。また、木村作品の朗読に合わせて、同市在住の石黒亮一さんが撮影した草花などの写真が映し出され、詩の奥深さに色を添えていました。昼と夕方に2回行われた公演には、津軽出身やゆかりの人も多く詰めかけ、懐かしそうに聞き入る人の姿も多く見られました。

初めて木村作品に取り組んだ中村さんは、「下川原さんと『土筆』を一緒に読むのは初めて。詩の解釈や感情の込めかたなど、かなり稽古でディスカッションしました。いい経験になりました」と、感慨深い表情。下川原さんは、「木村作品は、モノトーンではなく、色鮮やかな世界。ようやく東京で木村助男を紹介することができて嬉しい」と喜んでいました。

(編集部・小畑)

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