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【あおもりびと発見!】りんご剪定鋸の目立て一筋50年以上 宮舘光四郎さん(弘前市)ー後編

先日は、りんご剪定(せんてい)に欠かせない剪定鋸(のこ)の切れ味を磨く「目立て職人」の宮舘光四郎さんの仕事ぶりに迫った動画をご紹介しました。この動画のお披露目の機会に、若手りんご農家が宮舘さんの話を聞くフォーラムが開かれ、同席させていただきました。

 

何と90人もの弘前市近郊の若手りんご生産者さんが参加、関心の高さが伺えます。

 

 

宮舘さんが目立てする鋸は「枝に当てて引くだけでストンと落ちる一方、枝を切ったという実感が残る」のが特徴とされます。一方で、正しい姿勢で鋸を引かないと、刃が折れるというリスクを伴います。

 

それに比べると、大量生産品の替え刃鋸は、無理な体勢からでも力任せに切れる(切って折れても惜しくない)一方で、「枝の皮が残って、そこから折れて切り離される」という状況。どちらがりんごの木にダメージを与えるかは明らかです。

 

こうした切れ味を実際に試した参加者からは、枝を落としては目を丸くしたり、仲間同士で「目立てした鋸の切れ味は感動する。自分も一回使ってみてからは、その虜になってしまった」と熱っぽく話す姿も見られました。

 

宮舘さんの凄さは、顧客一人一人に合わせたカスタマイズをしてくれること。「地域によって木の硬さが変わる」「柄を握れば鋸の使い方が分かる」と語る宮舘さん。「鋸を木に当てる角度や引き方、その人のけがや体調(脳卒中で腕が上がらないなど)、どうやって鋸を使うかを考えて目立てを施す」のです。

 

 

「鋸が良くなると、剪定は楽しくなる。吹雪いていても畑に出ていきたくなる。自分が目立てした鋸を使った農家さんが、畑から興奮して電話をかけてくれることがある。『最高の切れ味だ!ありがとう』と言われることが、それが一番うれしい」

 

昔はこうした職人さんがたくさんいた弘前市。ですが時代は変わりました。宮舘さんに弟子はいません。実は新たに剪定鋸をつくることができる職人は、既にいなくなってしまったといいます。では、同じく剪定に欠かせない「剪定ばさみ」はどうでしょうか。りんごを運ぶ「竹籠」を編んでくれる職人さんはどこにいますか?

 

 

日本一、世界一の品質を誇る青森りんご。それを下支えする業界が今、存亡の危機にあります。今回の動画をきっかけに、その環境に目を向けてくれる方が増えることを祈っています。

(編集部S)

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